定年と再雇用の厳しい現実

この記事は約8分で読めます。
記事内に広告が含まれています。
【広告】

雇われビジネスパーソンにとって避けられないのが定年退職です。すでに定年を過ぎた方は別として、現役の皆さんは定年後のプランをお持ちでしょうか?夢に向かって転身?何もせず楽隠居?あるいは再雇用?今回は定年と再雇用について取り上げてみます。定年になる前に定年と再雇用についてその厳しさを知っておきましょう。

【広告】

定年について

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

企業の従業員の定年については60歳を下回ってはいけないという法律の規定があります。

(定年を定める場合の年齢)
第八条 事業主がその雇用する労働者の定年(以下単に「定年」という。)の定めをする場合には、当該定年は、六十歳を下回ることができない。ただし、当該事業主が雇用する労働者のうち、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務として厚生労働省令で定める業務に従事している労働者については、この限りでない。
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(https://elaws.e-gov.go.jp/)

第八条の例外に該当する業務従事者以外の定年は最低でも60歳でなければいけません。

60歳以上であれば定年の上限はなく、企業の事情により65歳定年でも70歳定年でも法律上は全く問題ありません。

再雇用について

65歳までの雇用確保義務

さらに年金支給開始年齢の引き上げとともに60歳を超えても雇用確保が義務付けられました。

(高年齢者雇用確保措置)
第九条 定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
一 当該定年の引上げ
二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
三 当該定年の定めの廃止
2 継続雇用制度には、事業主が、特殊関係事業主(当該事業主の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある事業主その他の当該事業主と特殊の関係のある事業主として厚生労働省令で定める事業主をいう。以下この項及び第十条の二第一項において同じ。)との間で、当該事業主の雇用する高年齢者であつてその定年後に雇用されることを希望するものをその定年後に当該特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結し、当該契約に基づき当該高年齢者の雇用を確保する制度が含まれるものとする。
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(https://elaws.e-gov.go.jp/)

60歳以上65歳未満は、定年引き上げ、継続雇用制度、定年廃止のいずれかの措置をとらないといけません。

定年引き上げは人件費負担が大きくなりますのでほとんどの企業は継続雇用制度、平たく言えば定年再雇用制度を採用しています。

第2項にあるように「定年後に雇用されることを希望するもの」に限定されており、改めて雇用契約を締結することになっています。

当然、正社員と再雇用者では適用しうる休暇制度などに違いがある可能性が出てきますので、再雇用者に適用すべき就業規則などもなくてはいけません。

再雇用とはいえリストラもありうる

ここで注意していただきたいのは、企業は希望するものを雇用する義務はあるとしていますが業務内容や賃金については一切ふれていないことです。

またこの法律が施行された平成25年4月1日より前から定年再雇用制度を設けている場合、その企業の再雇用規定は経過措置として令和7年3月31日までその定年再雇用制度を継続運用することが認められています。<附則(平成二四年九月五日法律第七八号)>

平たく言えば、平成25年4月1日より前から定年再雇用制度があり、その契約更新に一定条件が付いている場合はそれは令和7年3月31日までは有効だということになります。

よくあるのは「特別支給の老齢厚生年金」の支給開始年齢に達するまでは希望すれば、契約更新できるが年金が出るようになったら業務評価などの条件で更新可否が決まるというものです。

なにがなんでも65歳まで雇用されるわけではありません。

企業にとっては、やはり若い人に活躍の場を与えたいので、ぶっちゃけロートルは早めに引退願いたいケースのほうが多いでしょう。もちろん特殊な技術を持っているので、ノウハウ伝授などで逆に65歳以上も後進指導をしてほしいという場合もあるでしょうが、ほとんどの仕事ではそんなことはありません。

露骨な表現ですが、企業側は後進指導に当たって欲しい一部人材以外のロートルには早々に引退願いたい。しかし法律があるので雇わなければいけない。
→最低の条件(最低賃金に抵触しない範囲)で、書類整理でもやらせておく。

なんてこともありえます。

国は雇用年齢を引き上げようとしていますが、企業の側はなんとか早々に「自主的に」引退させるように仕向ける、いわば再雇用リストラみたいなことがあっても何ら不思議ではありません。

再雇用の賃金について

覚悟すべき賃金

メディアでは現役時代の6割に下がったとか言われていますが、筆者に言わせると再雇用賃金は最悪は各都道府県の最低賃金レベルである、と思っておけば間違いありません。

仮に1日7.5時間、年間労働日数240日とすれば、年間所定労働時間は1,800時間です。
最低賃金は最も高いのが東京都で1,013円、最も低いのは792円、加重平均は902円。

すなわち期待しうる最低の年収は、
東京都で1,823,400円、最低は1,425,600円、加重平均でも1,623,600円
です。

これは月齢給与だけで考えているので、企業によってこれに多少色をつけて再雇用者にも若干の賞与があると、200万円台半ばには乗るでしょう。

Webのメディアなどでは、年収1100万円の管理職が再雇用で500万円に下がった!なんて記事をたまにみかけますが、再雇用で500万円なんて相当恵まれた状況であるのは間違いありません。

2年前の記事ですがDIMEにもっとも現実的なデータがありました。

定年前の最終年収は800万円を超える人が5割を超えていたのに対して、再就職(再雇用)後は100~200万円が15%、200~300万円が17%、300万円~400万円が22%です。

これはかなり現実的なデータだと思います。

週5日勤務とは限らない落とし穴

冒頭であげた高年齢者等の雇用の安定等に関する法律では、雇用義務はうたっていても内容まではうたっていません。

企業だって苦しいのですから、再雇用もワークシェアなんてのもありえます。

ワークシェアといわずとも勤務日数を週4日とか週3日にするというものです。

当然給料は4/5とか3/5になりますよね、普通に考えれば….ですが。

最低賃金に色が付いた程度の給与で週3日勤務の契約を提示されたら….と試算してみてください。

メディアに顔を出す再雇用で450万円しかもらえないと嘆いている人、相当恵まれた再雇用環境にあると言わざるを得ません。

現実の再雇用者は100万円~300万円で甘んじているのですよ。

還暦超えたら自分の価値は現役バリバリ時代の1/4くらいに落ちると思っていればがっかりしないはずです。

再就職はもっと厳しい

ならば再雇用じゃなくて再就職だ!

甘い!です。

企業の採用状況・条件は極端にいえば59歳と60歳ではまるで違います。

よほど特別な技能や経験がない限り60歳を超えた再就職は二束三文だと思って間違いありません。

実際、60歳以上の求人ってひどく限られますよ。

50歳の貴方、仮に今転職先を真剣に探しているとして、Webで探してみてください。
意外にも口が少ないことがわかるはずです。

そりゃそうです。

企業だって60歳を超えて、特筆すべき経験や指導力や人望がない限りは事務くらいしか用途がありません。その事務だってどんどん自動化しているのに、60歳のオジサンはIT音痴が相対的に多い。これじゃ使えねぇ!そんなの雇う義理はないわけです。

以下はかなり乱暴な書き方をしていますが、これが採用側の本音です。

40名の部下を率いた経験がある?
→それがどうした?再就職者に部長職なんかありえないだろ、部下の指導とかありえないだろ。あんたウチのベテラン?そうじゃねぇだろ!ならば偉そうな口叩くんじゃねぇ
→今は、事務で手が足りねぇんだよ、EXCELでマクロとか組める?だめ?なら要らないよ、帰った帰った、ふざけんなよ、いい年して世の中舐めてんじゃねぇぞ。
→IT系の面倒を見られる人材なら年令問わず欲しいけど、え?スマホもロクに使えない?クソ喰らえだな、家で煎餅でも齧ってろってーんだ・

これが現実だと思っていれば間違いないです。

夢を打ち砕くようですが世の中非常に世知辛いのです。
若いうちはスキルや経験の無さを若さがカバーできますが、60歳になって業種業界を超えて光るものがないと絶望的です。部長だったとか課長だったとかの経歴はハッキリ言ってクズにしかなりません。そんな経歴は定年とともにゴミ箱に捨てて真っ白から始めるべきです。

いやそうじゃない、自分は…という方は、きっと優れた技術・ビジネス力・指導力・人望をお持ちなレアな方です。

まとめ

定年後の方は身にしみておられるでしょう。後何年かで定年の方、再雇用や再就職は相当・かなり厳しいのが実態ですし、それはすなわち定年後の生活設計も重要になります。

次回は生活設計について触れてみることにします。