退職後の収支設計と健康保険の話

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2021年6月21日の記事で定年前から退職後の収支設計をすべしという話をしました。正社員を定年で辞めたあと自由人になるのか、再就職・再雇用なのかによって結構生活設計は変わってきますが、その大きな要因の一つが健康保険です。

正社員退職後1年目は住民税の恐怖

60歳定年で正社員を退職する時、日本の多くの企業ではそれなりの安くはない給与で退職することが多いと思います。

特に、最後の最後まで部長とか課長職についていたとか管理職待遇だったという場合は、最後の年収はそれなりだと思います。

この時に問題なのが退職1年目の住民税です。

住民税は昨年分の年収に対して課税されますから、高収入であればあるほど高くなります。

退職直前月々いくらくらい住民税が引かれていましたか?

結構な額が天引きされていませんでしょうか?

退職直前の住民税天引き額x12ヶ月分が退職1年目に支払うべき住民税額と覚悟しておくべし。

今年、あるいは来年定年の貴方、早速給与明細を確認してみてください。

そうそう、そこです、その住民税の額を正社員の収入がなくなっても支払わねばなりません。

収支設計の穴は健康保険

2021年6月21日の記事では、現在の支出を記録し普通に暮らせばかかるであろう費用の1年分÷12が1ヶ月平均で必要な金額になるといった趣旨で書きました。

理屈で言うと、公的年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金、企業年金)やその他収入(アルバイトや投資配当など)をあわせた額の手取り(税引き後)の1年分÷12が、前述の支出と等しいかそれより大きければOKなわけです。

ただし、天引きされている項目の中で退職後は自分で支払う項目がありますので、それを支出として組み込むのを忘れないようにしてください。すなわち健康保険(介護保険を含む)です。

退職後の健康保険:任意継続被保険者と特例退職被保険者

企業の健康保険組合による健康保険料は収入により高低しますので、例えば管理職から再雇用になって収入激減すると健康保険も驚くほど安くなります。

筆者の経験上これはとてもありがたいです。

その後退職して自由人でいるとなると問題なのは健康保険で、通常は国民健保か組合によって制度があれば任意継続被保険者というのがあります。

一般には組合健保の任意継続と比べると独り身ならば国民健保がお得、扶養家族があれば任意継続になる場合が多いようです。これは組合健保では扶養家族もカバーされますが、国民健保は一人一人独立していますから夫婦なら二人分ということ。

任意継続は基準となる収入がないので健保組合ごとに定められた基準額に従って保険料が決まり、さらに会社負担がないので100%自己負担、加入できる期間は2年間です。

2年過ぎたあとは国民健康保険に加入する、家人の扶養家族になるのいずれかになります。

一部大企業の健康保険組合では、退職後2年間の任意継続に続いて75歳の後期高齢者になるまで「特例退職被保険者」になることができます。自分の場合どうなるかは所属の健保組合に確認してください。

特例退職被保険者」の保険料は全従業員の平均月収(標準報酬月額)の1/2一定割合をかけるのが一般的なようです。これが国保に比べて高いか安いかは扶養家族の有無やその人数によって変わります。

健保組合継続(特例退職被保険者)でいるメリットは、付加給付(高額医療費の場合の組合独自の上乗せ給付)や、健保組合が行なっている各種健康づくりサービスの利用ができたりしますので、単純に保険料だけでは計算できません。

任意継続被保険者特例退職被保険者は、傷病手当金・出産手当金を除けば現役時代とほぼ同じ給付を受けることができ、組合によってはいろいろな付加サービスも同様に利用できるのでメリットはとても大きいです。勤務先の健保組合にこれらの制度があれば優先検討すべきです。
ただし、任意継続は退職後そのまま継続加入し、特例退職は任意継続に続いて加入しないといけません。つまり、退職後一旦任意継続に加入して、その後別の会社に再就職してそこの健保に入ると(入らねばなりません)任意継続は終了し、最初の会社の特例退職には入れません。健保の視点からみると就職すりゃ良いってものでもないわけで。

まとめ

退職後の収支設計において、必要な支出は今の生活をベースに支出を加算していく。FPのいうように必要最低額の積み上げは理想論であり現実は実現困難な机上の空論。

現在の支出を積み上げて必要な生活費算出の際に、現在天引きされている健康保険料・介護保険料を忘れないようにすること。年額では意外に大きな額になる。

退職後の健康保険は、扶養家族があれば任意継続被保険者制度、そして制度があれば特例退職被保険者制度を利用するのが合理的である。

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