世のライフプランナーの方は、さまざまな定年のための生活設計プランを提案されていますが、それらには現実乖離したものが多いと感じています。今回は筆者の経験と持論により定年を迎えるまでにやっておくべきこと・定年後の生活設計について考えます。
退職金と企業年金は同じもの
恥ずかしい話ですが、まだ40歳を超えた頃はいわゆる「企業年金」(公的年金とは別)と「退職金」は別物だと思っていました。
すなわち、公的年金は公的年金でもらえて、それとは別に大企業であれば企業年金があり、そして定年退職時には退職金ももらえるものだと信じていました。今から思えば随分無知な話です。
夢としては素敵だと今でも思っていますが、素敵でないのは資金面です。
退職が近づいていろいろ調べたり会社からの説明があったりして現実が極めて冷酷であることがわかりました。
例えば、退職金が2,000万円受け取れるとして、それとは別に例えば企業年金15万円/月がもらえるわけではないということです。
退職時にローン残高元利合計1,500万円あったとしたら、退職金一括返済したら500万円しか手元に残らず、なおかつ企業年金は一切なしで国の老齢基礎年金と老齢厚生年金(勤務先が厚生年金に加入している場合)のみになるわけです。
あるいは退職金は一括ではなく分割で年金として受け取ることも可能です。
退職までに借金はゼロにせよ
貴重な退職金をローン返済などにあてないために、退職時には何が何でも借金(ローン残高)をゼロにしましょう。
そうでないと重要な老後資金である退職金をローン返済で費やしてしまいます。
現役中に、いろいろ我慢してもできるだけ繰り上げ返済をしましょう。繰り上げ返済は元利合計残高を想像以上に減らしてくれます。
ローンを借りる時は月々の返済額、賞与月の返済額など現役時代の収入をベースに考えるのが普通ですよね。
退職後の収入は、再雇用したとしてもわずかばかりの再雇用給与と支給開始年齢がどんどんくりのべされていく年金しかないわけです。
退職金をゼロ円(一括でもらわない)で全額を企業年金に回して、再雇用給与。これが退職直後の収入のすべてです。もちろん他に儲かる副業でもすれば別ですが….。
この収入というのは個人差は非常に大きいですが、ローンを組んだ時の推定月収とは相当差があります。
そりゃそうですよね。
それに現役時代のような高額なボーナスは一切ありません。会社によっては再雇用ボーナスもあるかもしれませんが、まあ雀の涙程度と思っておけば間違いないです。
このルールを言い換えれば次のように言い換えも可能です。
ローンは退職時には残高ゼロになるように組め!
ぶっちゃけ、退職時には借金を全部綺麗にしておけってことです。
退職後に必要な収支を試算せよ
世のファイナンシャルプランナーの多くは、標準的支出から食費はこれくらいで….といって積み上げ方式で必要な生活費を算出することをすすめる場合が多いように思います。
これは決して間違っておらず、理論的には非常に正しいです。
ただし、理論は理論であり、生活スタイルは百人百様。
STEP-1:家計簿をつけて支出を把握する
まず最初の一歩は支出を正しく把握することです。
少なくとも1年間は継続してつけてください。
ざっくり丼勘定で今は大丈夫でも、退職後の激減した収入では生活できません。
これが非常に大切です。
家計簿と現金残高がぴったりあわなくてもかまいません。
目的は支出内容の把握です。
方法は、パソコンでもスマホでも紙の家計簿でもなんでもOKです。
できるだけ長続きするようなものを選びましょう。
つけるのが面倒すぎるのは本末転倒。
集計や分析の簡単さではパソコンの家計簿ソフトがよろしいかと思います。
入力はスマホアプリで簡単なのですが、集計や分析がちょっと弱いですし、そのためにはパソコン側のアプリも必要なものもあったりして、それなら最初からパソコンでいいじゃん。
STEP-2:必要な生活費の把握
人間、退職したからといっていきなり生活レベルを変えられるものではありません。
世間のファイナンシャルプランナーさんたちのプランは論理的に非常に正しいけど現実的ではないものが多いといったのはこのことです。
筆者の提案は以下の通り。
- 食費は家族人数が減らない限り変わらないが、現役である間にかかった外食費や飲み代は多少い減る事が多い。
- 4人家族で子供が手を離れて夫婦2人になったからといって食費が半分になるわけではない。
- 外食が減少しても中食が増える。
- 白物家電や給湯器は7~10年で壊れる。
- 一戸建て持ち家なら5年・10年単位で相当額の維持修繕費用がかかる。災害多発の昨今、いきなり多額の補修費も掛かる可能性が高い。
- 年に一度とか二度の海外旅行などはカットして考える。
- ボーナス時の贅沢支出はカットして考える。
- 保険は見直すべき。高額な所得保障など不要になるので医療中心の掛け捨てに移行。
- 定年後は健康保険料は100%自己負担。国保だと収入次第であるが1万数千円/人はかかると思って良い。勤務先の任意継続被保険者や特例退職被保険者と天秤にかけるべし。いずれにせよ毎月2万とか3万はかかると思われる(収入や加入健保組合による差は大きい)。任意継続被保険者や特例退職被保険者は、一旦別の制度の健康保険に入る(例えばパートナーの健康保険の扶養家族になる、再就職するなど)と再加入は不可能。
- 健康保険以外に住民税も天引きではなくなる。
- 退職した翌年の住民税はひどく高い(前年所得[=在職最終年]に対してかかるため)。
こんなふうに計算すると現状を急変することなしの生活でいくらくらい必要かが見えます
STEP-3:狸の皮算用をする
次は収入の計画です。
年金に関してはねんきんネットで受け取れる年金の概算額(税込み)の試算ができます。
初回の登録がちょっと面倒で、登録したらIDは郵便(圧着はがき)で送られてきます。
万一、IDを忘れると再発行はまた郵便になり時間がかかります。
収入としては以下のものが考えれます。
さらに、企業の制度により
があります。
このあたりが定年後65歳程度まで再雇用したとして得られる収入です。
STEP-4:天秤にかける
STEP-2の結果 ≦ STEP-3の結果 なら、とりあえず一安心ですが油断大敵。
STEP-2の結果 > STEP-3の結果なら、支出が多すぎるのでこれから定年までに支出を減らす生活に改めていくか、収入を減らす策を考えるかです。
STEP-2の結果 ≦ STEP-3の結果になるほうが多いかもしれません。
STEP-2の結果に月平均で10万を超えるローン返済が加わるというのは、いかに無謀なことなのかがわかってくるはずです。
OPTION:年金生活でも貯金をするには?
今回は退職前の40歳から50歳代が対象ですが、少し視線を退職後に向けてみましょうか。
年金生活=お金は減る一方とは限りません。
退職後にも貯金を増やすにはファイナンシャルプランー諸氏が述べえおられる方法を取りましょう。
ただし、もう少し具体的に自分の生活にフィットさせるためにSTEP-2の結果<STEP-3の結果にすれば良いのです。
ポイントはやはりSTEP-1の家計簿です。
部門を預かった管理職なら誰しも経験している「経費がかかりすぎている」とわかった場合の対策です。
「経費削減!」を声高に叫んでもおそらく何も変わりません。
現状の経費詳細を分析し、事業や業務を見直してなにか変えられないかを考えるわけです。
食費が多い→何故?何が多い?→外食が多い→何故?→作るのがめんどくさい→何故?→調理器具の出し入れが面倒くさい→ならば鍋一つで包丁やまな板を使わないで簡単につくれる料理や方法を楽しく導入しよう・自分で工夫してYouTubeにも上げてみよう…..
一例ですが、とにかく何故を繰り返す。
言い古された手法ですが、それなりに効果があります。
一人よりは家族全員でゲームのようにやると効果が高いでしょう。
真面目に意見を戦わせると、時として不穏な空気から夫婦喧嘩になりますのでご注意。
もっと乱暴にやるなら、STEP-2の結果 ー 100万円 ≧ STEP-3の結果にしましょう。
そうすれば毎年100万円の余裕ができます、理屈の上では….ですが。
最初からXXX万円しかないとなればそれで生活できるようなるものである。
若い頃と違うのは退職後にやたらお金だけためても面白くないし生活が惨めになるだけですので、そこは明るい目標を持つべきです。
5年後に夫婦でゆっくりぷち贅沢な海外旅行をする!とか。
そうすれば夫婦で協力しあえますよね。
それがモチベーションに繋がります。
まとめ
退職後の返金月収は激減しボーナスもないので、ローンは退職までに必ず完済せよ。
退職金=企業年金であり、一括受け取りか分割受取可の差である。
40歳を超えたら家計簿をつけよ。月々、年間の支出状況を把握するのが目的である。
ファイナンシャルプランナーの案のようにはなかなか生活は変わらない。家計簿をもとに海外旅行などあきらかな贅沢をカットして月々の現実的な支出を把握せよ。
定年後の収入は、国民年金、厚生年金(厚生年金のある会社ONLY)、そして会社によっては確定拠出型個人年金(iDeCo)もあり、再雇用で勤務継続すれば再雇用給与と高年齢雇用継続給付がある。
これらをもとに定年後の収支バランスを冷静に計算せよ。
次回予告
次回は、会社を離れた定年後について考えてみます。
退職金で、妻と二人でオーストラリア鉄道の旅をのーーんびり、ちょっと贅沢にしよう!